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【インタビュー】
「明確なコンセプトがあるから
世界観が広がる」
手描き結社・WHW!が新作Tシャツの
グラフィックに込めた思い

2022年春夏にジャック・ウルフスキンから販売するグラフィックTシャツ「JP CB CAMP & RIDE T」。このグラフィックデザインを手掛けたのが、今回取材した手描きアーティスト・チョークボーイさん率いる「WHW!」。デザインへの思いやジャック・ウルフスキンへの印象、そしてブランドとの共通点を伺いました。

【WHW!】
鎌倉のアトリエを拠点に活動する手描き結社。WHW!は「What a Hand-Written World!=素晴らしき手描きの世界」の略名で、看板や壁画の制作、グラフィックデザイン作成、イベント出店やワークショップなど多岐にわたる活動を行う。


■新作Tシャツのグラフィックテーマは「CAMP & RIDE」

新たに登場するグラフィックTシャツは「CAMP & RIDE」がテーマ。ジャック・ウルフスキンではアウトドアクティビティをサポートするため、2022年春夏コレクションから新たに“BIKEコレクション”を立ち上げ、アパレルからバッグまで幅広いアイテムを展開していきます。こういったアイテムを活用して、自転車に道具を載せてキャンプにいく、もしくはキャンプにいって自転車を楽しむスタイルを提案していきます。
WHW!が手掛ける、ハンドレタリングならではのヌケ感と、手描きだからなしえる直線的ではないユルさが、リラックスして自然を楽しむジャック・ウルフスキンの世界観、雰囲気と親和性が高いことから、今回グラフィックをデザインしていただくことになりました。

取材させていただいたのは、WHW!のメンバーで今回のグラフィックデザインをメインに担当いただいた、チョークボーイさんと舘野さんのおふたりです。

チョークボーイさんは、大阪の市立高校のビジュアルデザイン科に卒業後アルバイト先でメニューボードの制作を担当し、その手描きデザインで注目を集めます。その後、2015年に個展を開いて話題となり、今に至ります。
館野さんは、北海道でデザイン系の大学に在学中、飲食店のメニューボードの制作を担当。その際にチョークボーイさんの存在を知り、コンタクトをとってお手伝いをスタート。上京して本格的にデザインの仕事を始めて、WHW!に参加しました。

---おふたりは、ジャック・ウルフスキンからグラフィックデザイン制作の依頼を受けた際の印象を覚えていますか?

チョークボーイさん:嬉しかった反面、じつはジャック・ウルフスキンという名前は知っていましたが、どの国のブランドか、どんなものを販売しているのか、など詳しいことは知りませんでした。ある意味、バイアスが全くなかったので、白紙の状態で始められた点で、仕事はしやすかったですね。また、乗り物を主軸にしたい、というお話が印象に残っています。多くの企業さんは、たとえばキャンプシーンを出したいとか、ブランドの象徴となるものを出したいとか、そういった話しをされます。
ところが、ブランドの主張はそこまで強くなく、どちらかというとアクティビティに必要なアイテム、特に自転車をメインにして世界観を出したいと聞いて、なんだかおもしろいなと感じました(笑)。それに、お話していくとファッションブランドでもなく、登山やキャンプなどの専門ブランドでもなく、アウトドア全般を手掛ける総合ブランドなんだ、という点が興味深かったですね。

---制作過程で、どんなことを想像しながらデザインを進められましたか?

チョークボーイさん:スタート地点の街からゴールとなる山奥へ行く過程を、物語調に表現しました。道中の蛇行や橋、太陽が出てくる山々など、その先に待ち受ける楽しみを出すことで、このプリントを見た人が「キャンプしてみたい!」とポジティブに感じてもらえると嬉しいです。
また、Tシャツはアウターなどと比べて買いやすい点で、キャンプのエントリー層も含めた幅広い人たちがこれを手にとって、具体的なアクションの第一歩となれればいいなと思います。

館野さん:私自身、普段はあまり自転車に乗る機会がないので、今回のお話をいただいてから、デザインソースのために改めて自転車に乗ってみたんです。そうすると、意外と周りの景色を見ながら(楽しみながら)ペダルを漕いでいる自分に気づいたんです。
その感じたことをもとに、前を向いて広い視野で進む人を主軸にして、山や道、キャンプのサイトなど周辺の景色を楽しみながら向かっていくストーリーを考えました。


■アイデア(提案)とリクエスト(要望)の掛け合わせがいいデザインを生み出す

---おふたりの考えを聞いて改めてグラフィックを見ると、思いが伝わってきます。ちなみに、提案するまでの流れは、普段どのようにされているのですか?

チョークボーイさん:まずは打ち合わせの段階でコンセプトを作り、それをチーム全員に共有して、各々でデザインを考えます。リサーチをしてからチームミーティングでそれぞれ発表し、ラフを作っていきます。ラフは複数案作っておき、それを持って最初のご提案をします。

---ラフを複数案出す際、意識していることはありますか?

チョークボーイさん:ふたつあって、ひとつは明確なコンセプトを決めること。そして二つ目は具体的な内容・イメージを作り込まないようにすること、です。

---それはなぜですか?

チョークボーイさん:コンセプトが明確であれば、デザインに迷った際の拠り所にすることができます。実際、制作活動を進めていると、「これでいいの?」と思うことが何度もあるので、そんな時はコンセプトに立ち返って再び考えていきます。また、1つのコンセプトを俯瞰して見てみると、世界観が広がり、より説得力のある提案ができるようになるんです。
また、作り込まないようにする理由は、想像の余地を残すためです。こちらで作り込みすぎると、実際にそれがベストではない可能性がありますし、余地があることで依頼主の方々からもより具体的なご要望も出していただきやすくなります。こちらのアイデアとリクエストが掛け合わさることで、いいデザインに仕上がっていくのだと思います。


■個のスキルに頼りすぎず、チームでいいものを作り上げる

---お仕事をする際に、大事にしていることはありますか?

チョークボーイさん:尖りすぎないようにしています。我々は手描きに特化してデザインしているため、個のスキルが求められるように思われるんです。
でも、実際にはチームで作り上げるスタンスなので、個性が強すぎると統一感が出せなくなります。クオリティは保ちつつも、スキルに頼りすぎないように全体を見ながら進めるようにしています。

---スキルに頼らない、というところが興味深いですね。

チョークボーイさん:スキルは大事なのですが、スキルフルになりすぎない、ということですかね。つまり、達筆だからいつも同じ線を書くのがいいのではなく、コンセプトに合わせて1線1線に思いを込めて書くことが大事だと思っています。
そのため、ボクはメンバーそれぞれの制作過程を見て、邪魔をしないように補完しながらアドバイスすることもあります。

---チームで成果物を出すために、あえて突出しないことを大事にしているんですね。

チョークボーイさん:そうです。とはいえ、WHW!として表現の幅は広げないといけないので、引き出しを多くして常にアップデートするようには全員で心がけています。それを表現する場として、各案件の最初の1発目でそれを存分に出し合っています。


■いらないものに文字を描いてエコを手軽に

---そんなWHW!が手掛けたグラフィックを用いたTシャツの素材には環境保護の観点から100%認証されたオーガニックコットンが含まれていて、まさにジャック・ウルフスキンらしさが満載のアイテムになっていますよね。その点、WHW!で取り組まれているサステナブルやエコな取り組みはあるのですか?

館野さん:最近では、壁紙屋本舗さんとWHW!で共同開発した「CHALK UP!(チョークアップ!)」がそれにあたると思います。

---チョークアップ!とは何ですか?

館野さん:塗った面が黒板になる、水性のペンキです。黒板といえば黒や緑のイメージがありますが、それだけではなく、少しくすんだ黄色やピンクなど、インテリアに馴染みやすいカラーを中心に全14色あります。上からチョークで書いても水拭きで簡単に消えるので、壁に塗っておけば便利なコミュニケーションツールになります。

ある程度なんにでも塗装できるので、たとえばゴミになってしまうような空き缶などに塗装すればおしゃれな入れ物に様変わりします。使わなくなった子供のおもちゃも、「チョークアップ!」を塗ることでインテリアの一部になったりとアイディア次第で無限に楽しめるんです。

---おもしろい発想ですね!デザインが飽きたらまたその時の好みに合った色に塗り直してもいいですね。

チョークボーイさん:そうですね。 “絵を描く“ことで何かを伝えていきたいと考えているなか、やはり環境のことなど、私たち自身も気にしているテーマも色々な方々と共有していきたいですよね。そういった意味では、チョークアップも“絵を描く“カルチャーを通じて提案していける一つのサステナブルな取り組みだと思っています。

---最後に、手描きで今後どんなことを目指したいですか?

チョークボーイさん:我々は書くという仕事で、多くの人に伝えるのが得意です。自分たちが伝えたいこと、依頼主の方が伝えたいことを、手描きを通してアピールしていきたいです。


■WHW!の取材を終えて

現在はパソコンやスマホといった技術進歩により、手描き文化が薄れつつあります。そんな中、WHW!の取り組みはアナログではあるけれど、1線1線に思いを込めてデザインすることで、新しい境地を開拓しています。

チョークボーイさんのお話にあった、「コンセプトを明確にすることで世界観が広がる」という点は、ジャック・ウルフスキンの「自然に触れる距離と時間を大切にする」というブランドフィロソフィーがあるからこそ、自転車であったり、キャンプであったり、街着であったりと、幅広いシーンで自然を楽しむためのアイテムを提案できることに相通じると感じました。

手描き文化を通してメッセージを伝える、そんなチョークボーイさんと取り組んだグラフィックTシャツをぜひお試しください。


グラフィックTシャツ「JP CB CAMP & RIDE T」の詳細はこちら