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The Door to Outdoors 2021 Spring+Summer Experience.1

Outdoor
アウトドアでしか得られない『経験』を求めて
 西伊豆・松崎町の古道再生を発端にマウンテンバイクのカルチャーを興した松本潤一郎。
そして、東京・奥多摩を拠点にSUPによるアクティビティを探求する高畑将之。山と川という一見、全く異なるフィールドと対峙する二人が言葉を交わす。それぞれが向ける視線の先には不思議な共通点があった。

千年以上の歴史を重ねる松崎の古道をマウンテンバイクのトレイルコースとして蘇らせた松本。この地は現在、年間2,000人以上のゲストがマウンテンバイクを楽しみにやって来るスポットともなった。
「スピードに乗って、山を駆け下りることだけを楽しむのももちろん面白いんですが、僕はもっと山の多様な魅力に触れてほしいと思ってる。
伊豆地方ではこの古道が昔から生活の動脈でもあって、長い年月、炭をソリで引き下ろしていたことでハーフパイプのような形状になっていった。だからゆっくりと風景を見て、そういう歴史を感じることこそ面白い。僕にとってマウンテンバイクは山を多角的に楽しむツールであって、悪路でトレッキングシューズを履くという感覚に近い」

 こんな言葉に高畑も同調する。過激にも見える、激流下りのエキスパートとして知られる彼にとってもSUPはあくまでツール。求めるのは命を懸けたスリルではない。
「上手に川を下れたということよりも大切なことがあると、日々、感じています。SUPの操り方を教えるのがガイドとしての僕の役割ではない。川も山道と同じく、古くから生活の基盤となってきた道筋。そんな場所を下っていくのに最適なツールのひとつがSUPであって、これを利用すれば水辺からその土地の魅力や文化を感じることができる。確かに川を下っているんだけど、SUPを通じてしか感じられないなにかを受け取ってほしいといつも考えているんです」
二人がフォーカスするのは、言ってみればアウトドアでのエクスペリエンス。速さや上手さだけを探求するのではなく、アウトドアでしか得られない『感覚』を受け取ることこそ重要だと口を揃える。素晴らしきアウトドアの経験を求め続けるブランド、Jack Wolfskinと共鳴する部分だ。

マウンテンバイクで山を下った後はカヤックで釣りを楽しむ  二人に共通するのは、マウンテンバイクやSUPをライフスタイルに取り入れることで人生の視野が拡張するという視点。特定のフィールドにこだわりすぎることなく軽やかに大自然を楽しむという、アウトドアマンの真髄だ。松本がトレイルコースを切り開いたのもスリルやスピードを求めてのことではない。この地にある自然を通じてこそ、見えてくるものがきっとあると確信したからだ。
「ネパールやパタゴニアのトレイルを歩いた時、ピークを狙うだけが目的じゃないんだってことに気づいた。トレイルを進んでいけばいくほど、その土地の生活が見えてくる。松崎の古道を知った時も、そういうアクティビティができるだろうと考えたんです。海ばかりがクローズアップされてきた伊豆で、山の遊びを作りたいということもあったんですけどね」  そんな松本は最近、海でのアクティビティも活発化させている。カヤックに釣り竿を積んで、ゆっくりと海へ漕ぎ出す。戻ってくればたっぷりの魚とともに、満面の笑みだ。
「もともとカヤックは狩猟のための道具だったはず。そういうルーツを考えた時、伊豆でカヤックと釣りを楽しまないのはもったいないとも思った。エンジンの付いたボートで、船頭さんにここだよと言われて釣るフィッシングとは全然違う。自力だけで海へ出て、釣りをし、収穫して戻ってくるっていうのは圧倒的な体験だと感じています。もともと競争が好きではなかったし、アウトドアの楽しみってこういうことだろうなと確信してますね」

自然と人のフロウを調和させるために かつてはアドベンチャーレースの世界に身を置き、苛烈な状況下で自身を磨くことに打ち 込んでいた高畑。そんなプロセスのなかで確かな達成感を得た後は、川でのSUPを軸としたアウトドアでの活動に移行。このスポーツが有する魅力を広く拡散するべく、今では多様な試みに挑戦している。
「僕にとって心身の状態が安定するのは水辺だと気づいてからは、SUPで川を下るという活動が中心になっていった。川を進んでいけば人々の暮らしや土地の魅力が見えてくる。それに海へ出れば潮や波のリズムを感じて、自然への想いが深まってきます。そんな感覚を味わうために、技術を磨くわけです。SUPを楽しむためには、体力も充実していなければならないし、何より自然のフロウを感じてそれに乗っていくことが大切。だからトレーニングも必要なんだけど、重要なのは技術だけじゃない。本能に従ってシンプルに行動している結果が今、なんですよね」
 ここでフロウ、という独特のワードについて二人はその受け止め方をぶつけ合った。ゆっくりと考えた後、松本はフロウの捉え方についてこう言葉を紡いだ。
「高畑さんとはちょっと違うかもしれないけど、僕はそもそも人や制度にコントロールされるのが嫌で、なんとか別の次元で生きていきたいと考えていたらいつの間にか自然の中で過ごす今のスタイルになっていった。山でも海でも活動して大変だねなんてよく言われるんですが、もともと伊豆の人々は山や海を当然のようにライフスタイルへ組み込みながら生きてきたわけですよね。だから僕が行っていることは昔の人にすれば当たり前のことなのかもしれない。フロウっていうのは自然のリズムでもあるし、人間が本来持つリズムでもあるんでしょう。アウトドアで過ごしていると自然と人のリズムが調和するというか、そう考えると当然だけど人には自然の中での経験がやっぱり必要なんでしょうね」

地球を感じるために、次の扉を開く  山と森、川や海とフィールドは違っても、それぞれの間に境目はない。二人は自分にとって必要であれば川から山へ、山から川へと縦横無尽に移動を重ねるのだ。最近の気づきについて、高畑はこう話す。
「以前は気持ちよく川を下って、下流からは車で上流まで戻ってくるというガイドをしていました。でも、それはちょっとおかしいなと思うようになってきた。せっかく自力で川を下ったのなら、自力で戻ってくる方がもっと自然を感じられるんじゃないかって。だから少しエネルギーが必要にはなってきますが、川を下った後は山のトレイルを歩いて登ってくるという設定に移行しているんです」
 そのようなアクティビティによって、これまで知らなかったその土地のストーリーがより鮮明になると語る高畑。アウトドアに没入すればするほどどんどんとライフスタイルはナチュラルになっていき、自分の中に新たな内面が現れると、二人は言葉を合わせた。ボーダーレスに自然と親しむこと。二人の会話は自然とここに帰結していく。
「島が見えれば単純に行ってみたいと思う。山があれば自然と登ってみたくなる。80歳になってもそんな欲求が満たせるようにパフォーマンスを維持していきたい」
 高畑がこう言えば、松本はこう話す。
「ボーダーレスに楽しむことで関わる人とのつながりもどんどん増えてくる。純粋に山を駆け下りたいと思った気持ちが、海をフィールドとする人にも伝わっていくんです。僕はあくまで自分がやりたいことを実現しているだけですけど、そこから知らないうちに多くの人々へ様々な刺激が波及していく。そういう拡がりには大きな意味があると思うし、楽しいですよね、やっぱり」
 自然に回帰すればするほど、地球への憧憬は深まり、人としてどう生きていけばよいのか
という答えに近づいていく。二人の発する波長は、Jack Wolfskinの想いと完全にシンクロした。そもそもアウトドアには壁も、境界もない。互いに交わることも、触れることもままならなくなっている今だからこそ、我々は、もっともっとボーダーレスに地球を感じなければならない。そして、自然から受け取るすべてのものを、未来の調和へとつなげていかなければならない。

プロフィール)
松本潤一郎/Junichiro Matsumoto
神奈川県横浜市出身。10代の頃から海外を旅し、ヒマラヤ、南米大陸などをトレッキングやバイクで巡る。2008年に伊豆・松崎へ移住し、古道再生に取り組み、マウンテンバイクのツアーをスタート。海だけでなく伊豆の山の魅力を広く発信する。自身は畑での野菜づくりや米づくり、釣りなどを駆使して限りなくナチュラルなライフスタイルを実践。海、山、川の全方位を自由に楽しめる拠点として、「LODGE MONDO -聞土-」の運営にも力を入れている。

ショップ)
BASE TRES https://yamabushi-trail-tour.com
手ぶら、かつ、初心者でもマウンテンバイクを楽しめるイージーライドツアーから、ウォールやバンクなど圧倒的なトレイルライディングを存分に堪能するエピックライドツアーまで、誰でも楽しめるメニューがスタンバイ。そのほかプライベートツアーでは自由にオリジナルコースの設定も可能で、能動的にマウンテンバイクを楽しめるアイデアが満載のショップ。

LODGE MONDO https://lodge-mondo.com
廃業したペンションをリノベーションし、地域の情報発信拠点の役割も持たせた新感覚のアコモデーション。山、川、海をボーダーレスに行き来したいゲストには最適なロケーション。マウンテンバイクやカヤックにとどまらず、森の焚き火やハイキングを楽しめるツアーなども開催し、日々、伊豆の大自然が持つ魅力を発信し続けている。

プロフィール)
高畑将之/Masayuki Takahata
宮崎市日南市出身。大学卒業後から、アドベンチャーレース「Eco Challenge」に出場するなど、山、川、海、森をフィールドに過酷な競技の世界に没頭。2010年以降は、川でのパドリングを通じて、自然の大切さを啓蒙するべく幅広く活躍を続ける。
1999年/アドベンチャーレース Discovery Channel Eco Challenge Argentina 15位(日本人として初完走)
2004年~2009年/ラフティング世界大会 日本代表 2009世界大会 準優勝
2017年/Gopro Mountain Games(コロラド)Sup Sprint種目で優勝。世界No.1のRiver SUP Paddlerとなる

ショップ)
RIver Base HALAU halau.tokyo.jp
SUPの第一人者である高畑将之と、世界的なカヤッカーである安藤太郎が主宰する多摩川上流・御嶽のウォーターアクティビティ基地。世界中のラフティング、カヤッキングで培ったノウハウを活かし、ビギナーからエキスパートまで、それぞれに楽しめるメニューを用意。
自力で自然を楽しむための技術や感覚が習得できるショップだ。